「放射線検査」とひとことで言っても、「レントゲン」、「CT」、「MRI」、「核医学(SPECT、PET)」、「X線TV透視」、「血管造影検査」、「超音波」と様々な検査があります。厳密には「MRI」と「超音波」は放射線を用いていない検査になります。それぞれの基本的な違いや目的、特徴を解説します!
放射線検査の王道!レントゲン

子どもの放射線検査として最も多く行われているのが、「レントゲン」検査です🦴
私の10年の臨床経験からすると、子どもに対して行う放射線検査の中では圧倒的にレントゲン検査が多かったです。レントゲンは生後間もない赤ちゃんから幼児、学童そして大人や高齢の方まで幅広い患者さんに対して検査が行われます。骨折の確認や手の骨の状態で成長過程を観察するのにも用いられますし、背骨が曲がってしまう先天的な側弯症の検査にも用いられます。
レントゲンの特徴
- 注射のように痛みがない。
- 検査時間が非常に短い:検査が短時間で終わるので、小さなお子さんへの負担が小さいです。
- プロテクターと呼ばれる鉛でできたエプロンを装着することで親も検査に立ち会いが可能でお子さんの不安を軽減できる。
- CT検査などの他の放射線検査よりも比較的放射線被ばくが少ない。
- 骨や肺の状態を把握するための基本的な情報を効率よく得ることができ、重度の肺炎や骨折といった大きな異常がないかの確認や、その疑いを見つけるのに役立ちます。
- 胸部や腹部の撮影など、場合によっては病室など検査室以外の場所でも撮影が可能です。(ポータブル撮影装置を使用します)
- 長尺撮影という方法を用いれば、脊椎全体など広い範囲を一枚の画像で観察することも可能で、体全体のバランスや歪みなどの把握に適しています。
小さな疾患もはっきり分かるCT

レントゲンでよく分からない疾患やもっと詳細に観察したい場合に用いられます。先ほどレントゲン検査も骨折の確認に用いられると述べましたが、転んで頭を打った場合にはCT検査が行われることが多いです。レントゲンでは小さな骨折は見落としやすく、CTで詳しく調べることができます!特に乳児では頭の骨が柔らかく、骨折リスクも高いため、見逃してしまうリスクを低くするためにCT検査が施行されることが多いです。
CTの特徴
- 検査時間が短い:撮影する時間は合計でも30秒〜1分程度ですが、検査室に入って準備したり、検査の説明等の時間も含めるともう少し長くなります。
- どの領域もきれいに撮影できますが、他検査と比較して肺(胸部)や骨の状態(骨折の有無)を特にきれいに画像化できます!
- レントゲンでは分かりづらい異物の誤飲に対する検査にも適しています!例えば金属(ボタン電池、機械の部品など)はレントゲンでもわかりやすいですが、プラスチック(洋服のボタン)や魚の骨、食べ物などはレントゲンに比べCTの方がはるかに見やすいです!
- 造影剤(検査のためのお薬)を使わない検査であれば、注射のような痛みはありません。
- (注意点として)レントゲン検査と比べると被ばく線量は多くなります。しかし、診断に必要な情報を得られる範囲で、可能な限り少ない線量になるよう、お子さんの体格などに合わせて細かく調整して撮影していますので、過度な心配はいりません。
- より詳しく調べるために造影剤を使用する場合があります。その際は、注射による痛みが伴います。(造影剤についてはまた後ほど別の記事で詳しく解説します)
被ばくはないが大音量の工事現場みたいな音がするMRI

MRIの特徴は放射線ではなく、強力な磁石と特殊な電波(電磁波の一種)によって撮影する検査です。検査装置自体が大きな磁石でできていますので、金属類の持ち込みは絶対禁忌です!万が一にも金属類を持ち込んでしまったら撮影装置に吸着してしまい、修理に何百万円と多額のお金が発生してしまいますので、多くの場合で検査着に着替えて検査が行われます。被ばくが無いので、乳児の検査も行われたりしますが撮影の途中で動いてしまうと画像がぶれてしまうので、子どもが寝たタイミングで検査をしたり、場合によっては鎮静剤を投与して医師の確認の下で検査を施行したことも経験したことがあります。途中で動いてしまうと撮影し直しになってしまうので、検査時間が長引くこともあります。検査中はとても大きな音(工事現場の音と例えられることも。)がしますので、通常は耳栓やヘッドホンで対策することが多いです。少し狭いトンネルのような装置の中に入って検査を行います。 (閉塞感が苦手なお子さんもいますが、技師が声かけをしたり、工夫したりしています)
MRI検査の特徴
- 放射線を使用しないため、放射線被ばくがない。
- 検査中は工事現場のような大きい音がする。
- 少し狭いトンネル状の装置に入るので、やや閉塞感がある。
- 身体の軟らかい領域(筋肉、脳、心臓など)をきれいに画像化できる。
- 検査時間が20~60分程度と長い。小さなお子さんでは長時間じっとすることは難しいため、撮影中に動いてしまうと画像がぶれてしまう。
- じっとするのが難しいお子さんに対しては場合によっては鎮静が必要となります。鎮静を行うことで身体の動きがほとんどなくなるため、きれいな画像が得られます。鎮静は医師の立ち会いで行われるため万全の体制で、安全に検査を受けることができます鎮静を行っても安全に検査ができます。
- 装置が磁石でできているため、検査室内に金属類の持ち込みができない。
- 金属類は装置に吸着してしまうため、ペースメーカーや金属クリップなどが埋め込まれている場合では検査できないことがある。
縁の下の力持ち。地味で目立たないが役に立つ核医学検査(SPECT,PET)

あまり聞き馴染みが無い「核医学検査」です。大学病院などの規模の大きい施設でないと撮影装置が入っていないことが多いため、解説もあまりされていないことが多いです。実は、私自身も大学院でこの核医学分野を専門に研究しています。だからこそ、少し難しいイメージがあるこの検査について、分かりやすく丁寧にお伝えできることがあると思っています。検査数はレントゲンなどに比べれば少ないものの核医学検査でしか分からないこともたくさんあります!レントゲンやCTではX線と呼ばれる放射線を身体に当てて検査しますが、核医学検査では、検査のためのお薬(ごく微量の放射線を出す性質を持っています)を注射などで体内に入れ、そのお薬が体の特定の場所に集まる様子を『目印』にして、体の外から特殊なカメラで撮影し画像を作り出します。
特に子どもの検査で用いられる場合は先天性の胆道閉鎖症✽1の場合では血液検査で胆道閉鎖症が疑われる場合に核医学検査が行われます。核医学検査を行うことによって胆道閉鎖症を否定、もしくは強く疑うことができるので治療方針の決定につながる重要な検査になります。
✽1胆道閉鎖症:胆嚢から生成される胆汁と呼ばれる消化液が排泄される胆道が閉塞してしまい詰まってしまう疾患。治療には手術が必要な場合が多いと言われています。
核医学検査(SPECT,PET)の特徴
- 体の『働き(機能)』を見ることができる: レントゲンやCTが主に体の『形』や構造を見るのに対し、核医学検査は特定の臓器や細胞がきちんと『働いているか(機能しているか)』を見ることができます。お薬が体の目的の場所に集まるかどうかなどを画像にすることで、形の変化だけでは分からない病気の状態を知ることができます。(胆道閉鎖症の検査も、胆汁がきちんと流れているかという『機能』を見ています)
- 検査の際にごく微量の放射線を投与します:検査で使用されるお薬はすぐに放射線を出すチカラが弱くなり、尿や便によって速やかに体外に排出されるようにできています。また、アレルギー反応を示すものはごく稀であり、安全に考慮されたお薬です。
- 検査時間が長い:お薬が身体の中を行き渡り、目的の臓器に集まるのを待ち、微弱な放射線を画像にするため、ゆっくり撮影を行っているためです。
- 撮影は動きに弱い:撮影中は動くと画像がぶれてしまいきれいな画像が撮れなくなってしまうため、薬で眠って(鎮静して)検査するか、起きたまま検査できる場合は動画を見ながらリラックスして検査を行います。施設に問い合わせてみないと分かりませんが、親御さんも検査室内で一緒に立ち会うことが可能な場合もあります。
- 被ばく線量は検査の種類や目的によって異なるため、レントゲンやCTなど他の検査と単純に比較はできませんが、常に診断に必要な情報を得られる最低限の量のお薬を使用するように計画されます。
- 周りの人への影響は?:検査後しばらくは、体からごく微量の放射線が出ていますが、その量は少なく、周りの人に健康上の影響を与えるレベルではありません。ただし、念のため、検査後の一定時間(通常は当日中など)は、長時間ぴったりと密着すること(長時間の抱っこや添い寝など)は控えるようにといった説明がある場合があります。具体的な注意点は検査を受ける施設で必ず確認してください。
リアルタイムで観察できるX線TV透視検査

X線TV(テレビ)透視検査はX線を使用して人体の内部をリアルタイムで観察することができます。
主な検査内容としては、X線で見えるように工夫された食べ物やお薬を使って飲み込みを調べる検査(嚥下造影)を行ったり、胃や腸にチューブを入れて観察する検査、骨折や脱臼した際の整復(元に戻すこと)、尿路系が狭いまたは閉塞している時の治療などがあります。
X線TV透視検査の特徴
- 身体の動きや内部をリアルタイムで観察しながら検査を行うことができるので、その時その時に最適な検査の進め方を微調節することができる。
- 体の「動き」を評価できる:レントゲン写真(静止画)と違い、臓器や体の部位が実際に『動いている様子』を観察できます。例えば、食べ物やお薬(バリウム)が食道や胃を通過していく様子、関節の動きなどを詳しく見ることができます。
- 造影剤を使うことが多いです:多くの場合、バリウムやヨードといった『造影剤』(目的の場所を分かりやすく映し出すためのお薬)を飲んだり、注入したりしながら検査を行います。
- 必要に応じてその場で検査から治療に移行することができる。一度に検査から治療まで行えるので、スムーズに治療が進み、患者さんの負担が軽くなる。
- X線を使うため放射線被ばくがあります。検査時間が長くなると、一枚のレントゲン撮影よりは被ばく量が多くなる傾向がありますが、CT検査よりは少ない場合が多いです。(※検査内容や時間によります)常に必要最低限の時間・線量で検査を行うよう努めています。
- 検査時間は、目的(簡単な観察か、処置・治療か)によって数分で終わるものから、1時間以上かかるものまで様々です。
- 検査中の体勢について:検査台の上で寝た状態で行うことが多いですが、検査によっては立ったり座ったり、体の向きを変えたりしながら観察することもあります。
- 検査自体(X線を当てること)に痛みはありません。 ただし、造影剤を飲むのが苦手だったり、処置・治療に伴う不快感や痛みを感じたりする可能性はあります。脱臼の整復では外れた骨を元の位置まで戻す必要があるため、かなり強い痛みが伴います。
- お子さんの検査では、できるだけ怖がらないように、また動かないように様々な工夫をします。検査室に親御さんが一緒に入って付き添える場合もあります(※安全のため鉛でできたエプロン(放射線被ばくを防ぐための防護衣)を着用)。
細かい血管まで描出可能!血管のことなら血管造影検査!

血管造影検査(カテーテル検査)は細かな血管まで詳しく観察できます!
先天性の血管障害は意外と多くあり、頭系では「もやもや病」や「脳動静脈奇形」など、心臓系では「心室中隔欠損症」や「ファロー四徴症」などに対してカテーテル検査や治療が行われます。CTやMRIでも血管情報はある程度把握することはできますが、血管造影検査では他の検査よりもはるかに詳細に小さな血管も観察することができます。
血管造影検査の特徴
- 造影剤を使用しながらリアルタイムで血管情報を観察できる!
- 脳や心臓、その他血管を細かい領域まで詳細に観察可能であり、血管の異常(狭い、詰まっている、異常な血管のつながりがあるなど)を正確に把握することができます!
- カテーテル検査で血管の異常を観察した直後に検査から治療に移行することができ、命に関わる場面で適切に対処することができる。:大出血している場合などで早急に検査または治療が可能。
- 今まではお腹を開ける手術をしなければ分からなかった詳細な血管情報が細い管(カテーテル)を使用するカテーテル検査によってわずか数mm程度の小さな針穴だけで分かるので身体の負担が小さく、回復も早いです。
- 細かい血管まで詳細に観察することができるので、「このまま様子をみるべきか」、「治療するべきか」という治療方針を正確に判断することができる。
- 多くの場合で局所麻酔を使用して検査を行う。血管内にカテーテルを挿入して検査を行うので、じっとできない場合や細かい治療を行う場合は麻酔科の医師の立ち会いのもと全身麻酔をかけてカテーテル検査または治療を行うこともあります。
- ごく稀にカテーテル操作による出血や血管損傷、造影剤による気分不良やアレルギー反応を招くリスクがある。しかし、周りには医師や看護師、診療放射線技師や臨床工学技士など、多くの医療従事者の下、カテーテル検査が行われますので、さまざまなリスクに対して迅速に対処できる体制が整えられています。
被ばくがなく、すぐにできる超音波検査

最後に「超音波検査」です。『超音波』という目に見えない特殊な音波を身体に当てて臓器から跳ね返ってくる音波を観察し、その跳ね返りの強弱を画像化しています。この検査は診療放射線技師が行っている病院と臨床検査技師が行っている病院、医師が行っている病院と様々です。放射線被ばくがなく、妊婦さんや小児の検査にも適しています。ただし、観察できる領域が限られていますので、すべての病気に適している万能な検査ではございません。身体の観察したい部位に専用のゼリーを塗り、「プローブ」と呼ばれる機械を使用して検査を行います。ゼリーを塗るのは身体の中に超音波を伝わりやすくするためとプローブを滑らかに動かしやすくするためです。
超音波検査の特徴
- 放射線被ばくが一切ありません。そのため、妊娠中の方や小さなお子さんも安心して検査することができます。
- 検査中に大きな音が出たり、痛みが伴うことも基本的にはありません。(観察部位をプローブと呼ばれる機械で押すことがあります。)
- お腹の臓器(肝臓、胆のうなど)、心臓、甲状腺、血管など、特に柔らかい組織や液体が溜まっている部分の観察が得意です。
- 検査時間は通常10分~30分程度です。(詳しく調べる場合はもう少し長くなることもあります)
- 病棟など、検査室以外の場所で検査が可能な場合もあります。(ポータブル装置を使用)
- 注意点として、肺や頭の中などは超音波検査で観察が難しい領域になります。肺:空気は超音波を反射し画像化しにくいため。頭の中:骨は超音波が伝わらないため、骨より深い臓器を画像化しにくいため。
- 検査する場所によっては食事制限や排尿制限(おしっこを我慢する)などを協力してもらうこともあります。
まとめ
これらのように一言で放射線検査と言っても様々なものがあります。(正確にはMRIと超音波は放射線ではありません)これら検査の特徴を理解し、各疾患に対して適切な検査法を医師が判断し、検査を行っています。私も放射線のスペシャリストである診療放射線技師の一人として、そして小さな子どもを持つ親として、小さなお子さんに対して最低限の被ばく量で診断に必要な質の高い画像を得られるように日々技術を磨き、細心の注意を払って検査をしております。どんな疾患、どんな領域に対しても「この検査をしておけばOK」と言えるような万能な検査は現在のところありません。それぞれの検査の特徴を活かして大切なお子さんのために必要最低限の検査で最大のメリットが得られるように医師と診療放射線技師がお互いに協力して検査に取り組んでいます。
この記事を通じて少しでも検査についての理解が深まったのであれば幸いです。これからも皆さんの不安に寄り添い役立つ情報発信をしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


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