こんにちは!現役放射線技師のラドパパです!😊
最近、子どもの股関節レントゲンで「あれ?いつもと違うな?」って感じた方はいらっしゃいますか?「いつもはお腹の上や大事なところに置いていた鉛の板(生殖腺防護シールド)が無くなっている?」、「うちの子の検査は大丈夫だったのかな?」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。😣
今回は「どうして子どもの股関節レントゲンであの鉛の板(生殖腺防護シールド)を使わない流れになっているの?」という疑問にお答えします!そしてその不安が少しでも軽減されるように現役の診療放射線技師が分かりやすく丁寧に解説します!📚
生殖腺防護シールドとは?なぜ防護をしていたの?☢️

ちょっぴり難しい話になりますので、ゆっくり読んでください😌
私たちの体の中には「生殖腺」と呼ばれる大切な臓器があります。生殖腺とは男性であれば精巣、女性であれば卵巣を指します。
放射線は上手に使えば身体の中を観察できる便利なものですが、使い方を誤ると身体に大きな影響を与えてしまいます。生殖腺に放射線を一度に大量に浴びてしまうと一時的に子どもができにくくなったり、遺伝的影響*が生じる可能性がゼロではないと言われています。
特にお子さんの場合は大人に比べて放射線の影響を受けやすいと言われておりますので、小児の股関節レントゲンでは観察しないものの「撮影範囲に近いので被ばくしてしまう生殖腺(精巣や卵巣)を放射線から守ろう」という目的で放射線を通しにくい鉛で出来た鉛板(生殖腺防護シールド)を使用して生殖腺防護を行っています🛡️
*遺伝的影響:放射線の被ばくによって生殖細胞(精巣や卵巣など)のDNA(体の設計図のようなもの)が損傷し、本人ではなく、生まれてくる子どもに影響が生じることです。具体的にはお腹の中で赤ちゃんがうまく育たなかったり、染色体の数や形の異常、生まれつき体の形に特徴があるなどが挙げられます。
でも、安心してください。今のところ、レントゲン検査で使うくらいの放射線で、実際に人間に対してはっきりとした遺伝的影響が確認されたという報告はありません。
今までの小児股関節レントゲンとこれからの小児股関節レントゲン🦴
これまでお話ししたように、お子さんの生殖腺を守るために、股関節のレントゲン撮影では鉛の防護シールドを使うのが一般的でした。
ところが、最近になってこの方針を見直す動きが出てきました。実は、日本の放射線医療に関わる複数の専門団体(日本医学放射線学会、日本放射線科専門医会・医会、日本放射線技術学会、日本診療放射線技師会)が、「子どもの股関節撮影では、生殖腺防護シールドを必ずしも使わなくても良いのではないか」 という共同声明を発表したんです。
そして、2025年4月からは、日本放射線技術学会が「小児股関節の生殖腺防護シールド廃止」を呼びかけるポスターを作り、多くの病院で使われるようになっています。もしかしたら、病院の待合室などで、こんなポスターを目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 (私も、勤務先の病院でこのポスターを掲示して、皆さんに情報をお伝えしています📣)

参考リンク:
- 股関節撮影時の⽣殖腺遮蔽の⾒直しについて(声明) 2025/5/25
- [お知らせ]「股関節撮影時の生殖腺遮蔽の見直し」についての共同声明と「小児股関節の生殖腺シールド廃止のポスター」について 2025/4/21
なんで?どうしてシールドを「使わない」方向に変わったの?🤔

「えっ?生殖腺は大事なんでしょ?だったら、今まで通りシールドで守った方が安心じゃないの?」 「わざわざ生殖腺の被ばく量が増えるかもしれないのに、どうしてそんな話になっているの?」
そう思いますよね。とっても自然な疑問です。
実は、生殖腺防護シールドには「生殖腺の被ばくを減らす」という大きなメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあることが分かってきました。
これからは、そのデメリットも考え合わせて、「本当に生殖腺防護シールドを使うことが、お子さんにとって一番良いことなのだろうか?」 という視点から、シールドを使わない流れになってきた理由を具体的にお話しします!
生殖腺防護シールドを使わない方が良い場合もある?3つの理由
理由1:シールドで隠れてしまい、大切な部分が見えなくなることがある

特に女の子の場合ですが、生殖腺を守ろうとしてシールドを置くと、骨盤全体が隠れてしまうことがあります。 「股関節だけ見たいんだから、骨盤は隠れてもいいんじゃないの?」と思うかもしれませんね。
でも、整形外科の先生は、股関節の状態だけでなく、骨盤全体を見て骨の成長具合をチェックしたり、体がねじれていないかなど、股関節だけでは分かりにくい情報を読み取ったりしているんです🧑⚕️ シールドがない方が、より多くの情報が得られて、正確な診断につながることがあります。つまり、必ずしも「シールドをすれば安心」というわけではないんですね。
理由2:シールドの位置がずれると、撮り直しで余計に被ばくが増えることも…

生殖腺シールドは、女の子なら卵巣や子宮のあたり、男の子なら精巣を覆うように置きます。 男の子の場合は目で見て位置を確認しやすいのですが、女の子の場合は体の内側にあるため、ぴったり合わせるのが難しいことがあります。
もし、シールドの位置が少しずれて、診断に必要な股関節の部分に重なってしまうと、残念ながらもう一度撮影しなおす必要が出てきます。男の子でも、しっかり守ろうとしてシールドを深く置きすぎると、同じように股関節にかかってしまうことがあります。
撮り直しになると、結果的にお子さんが浴びる放射線の総量が増えてしまう可能性があるんです。これでは、何のためにシールドを使ったのか分からなくなってしまいますよね。
理由3:撮り直しを心配して控えめに置くと、シールドの意味がなくなってしまう
「じゃあ、股関節にかからないように、少し離してシールドを置けばいいんじゃない?」と思うかもしれません。
でも、今度は逆に、肝心な生殖腺からシールドが外れてしまい、全く守れていない…なんてことも起こり得ます。これでは、何のためにシールドを置いたのか分かりません。
実は、子どものレントゲン撮影は、大人に比べて検査の回数が少ないため、私たち放射線技師も、毎回完璧な位置にシールドを置くというのは、ベテランであってもなかなか難しい技術なんです。(臨床経験10年目の私でも、本当に毎回緊張します…!)
そもそも、レントゲン検査の被ばくって、昔よりずっと少なくなっているんです!

医療で使われるX線は、100年以上前にレントゲン博士によって発見されて以来、どんどん進化してきました。 今のレントゲン装置はとっても高性能で、昔に比べてずっと少ない放射線の量でも、診断に必要なクリアな写真を撮ることができるようになっています。
だから、まず大前提として、レントゲン検査による放射線の被ばく量は、昔に比べて格段に少なくなっています。
そして、最初にお話しした「遺伝的影響」についてですが、現在のところ、レントゲン検査で使うような量の放射線で、人間にはっきりとした遺伝的影響が確認されたという報告はありません。
もちろん、不必要な被ばくは避けるべきです。でも、生殖腺防護シールドのように「遺伝的影響だけ」をとにかく心配して一部分を覆うことよりも、
- 本当に必要な量の放射線で、病気の診断に必要な情報をしっかり得ること
- 将来的ながんのリスクなども総合的に考えて、体全体の被ばくをできるだけ少なくすること
この2つのバランスが大切だ、という考え方に変わってきているんです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました😊
この記事が、少しでも皆さんの不安を和らげるお手伝いができていれば嬉しいです。
このブログでは、これからも現役の診療放射線技師として、皆さんが放射線検査などに対して感じる「?」や「不安」について、できるだけ分かりやすく、丁寧にお伝えしていきたいと思っています。
また、育児に関する情報も発信していきますので、ぜひまた遊びに来てくださいね!😌


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