CT検査やMRI検査で、「造影剤」を使った検査を提案されることがあります。「先生から造影剤を使った検査をしましょうと言われたけれど、説明が難しくてよく分からなかったな…」と、少し不安な気持ちのまま検査を受けることになった経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。 造影剤は、一言でいうと「病気を見つけやすくするためのお薬」です。この記事では、そんな「造影剤」について、皆さんの疑問や不安が少しでも軽くなるように、分かりやすく丁寧にご説明します!
造影剤ってなんだろう?
先ほどもお伝えしたように、「造影剤」は病気を見つけやすくするためのお薬です。もう少し詳しくお話しすると、体の中の正常な部分と病気の部分では、造影剤の集まり方や、体から出ていくスピードが異なります。その違いを利用して、病気を見つけやすくしています。 多くの場合、腕の血管から注射で造影剤を体に入れていきます。この処置は、医師、看護師、そして私たち診療放射線技師が安全に注意を払いながら行います。
どんな時に、どんな検査で使うの?

私の経験では、CT検査において、必ずしも全てのケースで造影剤が使われるわけではありません。病院の種類や得意な分野によっても異なりますが、例えばがん専門の病院などでは、より詳しく調べるために造影剤を使う検査が多くなる傾向があります。一方で、骨折の診断が中心の整形外科や、小児科では、造影剤を使わないCT検査で十分な情報が得られることも多いため、造影検査の頻度は比較的少ないかもしれません(もちろん、必要な場合は行います)。なぜかというと、骨折など骨の状態をみる場合は、造影剤を使わなくてもCT検査で詳しく分かることが多いからです。造影剤を使う検査では、造影剤を入れる前と後で複数回撮影することが一般的です。そのため、撮影回数が増え、放射線による被ばくも少し増えることになります。特にお子さんの検査では、この被ばくをできる限り少なくするよう常に配慮しています。ただし、とても大切なことなので強調させてください。 もしお子さんが造影検査を受ける場合、それは担当の医師が「造影剤を使うことで得られる情報(メリット)が、被ばくが増えるという影響(デメリット)よりも大きい」と慎重に判断した時だけです。ですから、被ばくが増えることに対して、過度に心配しすぎる必要はありません。一般的に「造影検査」というと、CT検査やMRI検査を思い浮かべる方が多いと思いますが、他にもX線TV検査(胃のバリウム検査もこの一種です)や、場合によっては超音波検査(エコー検査)でも造影剤が使われることがあります。また、「血管造影検査」という名前の通り、血管の状態を詳しく調べるこの検査では、必ず造影剤を使用します。
CT検査で造影剤を使うのは、どんなとき?

先ほどもお伝えした通り、骨折の評価などでは造影検査を行わないことが多いと述べましたが、どんな時に造影検査を行うのでしょうか?
- がんの診断や治療効果の確認: がんの大きさや広がり具合を詳しく見たり、治療によってがんが小さくなったかなどを評価します。
- がんの再発や転移のチェック: 治療で一度なくなったように見えたがんが再び出てきていないか(再発)、元のがんがあった場所から他の場所にがんが移っていないか(転移)などを調べます。例えば、肺がんが脳に転移しているかどうかを確認するなどです。
- 血管の病気の評価: 血管が細くなっていないか、詰まっていないか、出血していないかなどを詳しく調べます。
- 炎症の診断: 虫垂炎(盲腸)や腸閉塞など、お腹の中の炎症や閉塞の状態を詳しく見るために使うこともあります。
ここに挙げた以外にも、様々な理由で造影剤を使ったCT検査が行われます。
MRI検査で造影剤を使うのは、どんなとき?

MRI検査では、CT検査よりも造影剤を使用しない検査の割合が多い印象ですが、以下のような場合に造影剤を使うことがあります。
- 脳腫瘍やがんの脳転移の検索
- 肝臓がんの詳しい検査
- 女性の子宮や卵巣など、骨盤内の病気の詳しい検査
- 前立腺がんの詳しい検査
(CT検査と同様に、MRI検査で造影剤を使用する場合も、造影剤を使わない画像と使った画像を撮影するため、検査時間が少し長くなることがあります。)
造影剤のメリットとデメリット

ここで、造影剤のメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
- 病気をより詳しく、正確に見つけやすくなる! これが最大のメリットです。
デメリット
- ごく稀にアレルギー反応(副作用)が起こることがある
- (CT検査の場合)撮影回数が増えるため、放射線の被ばくが少し増える
- 検査の種類によっては注射が必要で、痛みを伴うことがある
- 検査費用が少し高くなる(造影剤なしの場合と比較して)
デメリットを見ると少し心配になるかもしれませんね。でも、これらのデメリットを考慮してもなお、病気の発見や正確な診断、そして適切な治療法の決定のためには、造影剤検査が非常に重要で、他の検査では代えられない大きなメリットがあるのです。 では、デメリットについてもう少し詳しくご説明します。
アレルギー反応(副作用)について
これが、皆さんが一番心配される点かもしれません。造影剤を使ったときに、ごく稀にアレルギーのような症状(副作用)が出ることがあります。 軽い副作用としては、検査中や検査直後に体が熱く感じたり、くしゃみが出たり、少し吐き気を感じたりすることがあります。特に体が熱くなる感覚は、CT検査で造影剤を使った方の多くが経験しますが、これはお薬が体に入っているサインのようなもので、通常はすぐに治まります。私たちも、この熱感があるかどうかを伺って、造影剤がきちんと入っているかを確認することがあります。 非常に稀ですが、重いアレルギー反応が起こる可能性もゼロではありません。 例えば、血圧が急に下がったり、呼吸が苦しくなったりすることです。頻度としては本当にごく僅かで、数万人に一人といった程度です。そして、万が一そのような状況になった場合でも、すぐに医師や看護師が適切な処置を行えるよう、常に準備を整えています。私自身、10年目になる臨床経験の中で何千件、もしかしたら何万件という造影検査に携わってきましたが、重篤な副作用が起きたとしても、迅速な対応で回復に至らなかった経験はありません。医療機関では、安全に検査を受けていただける体制を整えていますので、過度な心配はいりません。 検査前には、アレルギー歴や現在の体調について詳しくお伺いします。不安なことや気になることがあれば、遠慮なく医師や看護師、放射線技師に伝えてくださいね。
(CT検査の場合)被ばくについて
先ほども触れましたが、造影検査では造影剤を入れる前と後で撮影するため、造影剤を使わない検査に比べて放射線の被ばくが少し増えます。しかし、これも医師が「検査で得られる情報が、被ばくによる影響よりも重要」と判断した場合にのみ行われます。常に必要最小限の被ばくで最大限の情報が得られるよう努めています。
注射の痛みについて
CT検査、MRI検査、血管造影検査で造影剤を使う場合、多くは腕の血管から注射をします。注射の際にはチクッとした痛みが伴います。痛みが苦手な方もいらっしゃると思いますが、できるだけリラックスして受けられるよう、私たちもサポートします。 (ちなみに、胃のバリウム検査も造影剤の一種ですが、これは飲むタイプなので注射の痛みはありません。ただ、バリウムの味が苦手というお話はよく聞きますね。)
費用について
造影検査では、造影剤というお薬を使うため、使わない検査に比べて費用が少し高くなります。(目安として、造影なしのCT検査が8,000円~10,000円程度の場合、造影ありだと12,000円~15,000円程度になることがあります。これはあくまで一般的な目安です。) しかし、これも病気を正確に診断し、適切な治療を受けるために必要な費用とお考えいただければと思います。医師が必要と判断した検査であれば、その費用以上に受ける価値があると言えるでしょう。
それでも、造影剤を使う一番の理由

たくさんのメリット・デメリットをお伝えしましたが、それでも造影検査を行う最大の理由は、やはり「病気をより詳しく、正確に見つけやすくなる」ことです。 このメリットがあるからこそ、様々なデメリットを考慮した上で、医師は造影検査を勧めます。病気を早期に発見したり、病状を正確に把握したりすることで、より適切な治療方針を決めることができます。そして、それが最終的に患者さんの苦痛を取り除き、健康を取り戻すことに繋がるのです。造影検査は、現代の医療において、なくてはならない大切な検査の一つです。
最後に
この記事では、造影剤に関する様々な情報をお伝えしました。私の臨床経験やこれまでに学んだ知識を基にお話ししましたが、病院の方針や設備によって多少の違いがあることはご了承ください。 このブログでは、これからも診療放射線技師として、放射線や検査に関する情報を、皆さんに分かりやすく丁寧にお伝えしていきたいと思っています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。もし、検査に関して不安なことや分からないことがあれば、遠慮なく担当の医師や私たち放射線技師に声をかけてくださいね。


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